2024/02/29 16:23



【半端になった素材を活かす取組み】


canoan 中野紘子さんは、「上州座繰り」という伝統ある技法で繭から糸をひき、草木染めを施し、生地を織るところまで、一貫して確かで丁寧な手仕事による美しい作品を生み出されている作家さんです。


Littlemissでは、手織りののちに半端になった、いわゆる「端材」としての糸をお譲りいただき、アクセサリーを仕立てています。


今ではお目にかかる機会が減った「純国産」の絹糸、それも群馬の上質な「上州座繰り糸」は贅沢そのもの。たとえ数センチの糸端になっても変わらないその輝きは、端材とは呼びたくないほどの立派な「素材」です。春の時期の桜色を中心に、これまでたくさんの方へお届けしてきました。








【心地よい”ゆらぎ”のある糸】


「上州座繰り」は江戸時代から続く歴史ある製法だそうで、機械では決してつくれない、ゆらぎのある風合いが魅力です。


空気を含むようにやわらかく、やさしく。

透明感があり、光を蓄えて輝く。

人の手の跡、心の跡が伝わってくるような、心地の良い糸。


太さ、撚りの度合、強弱、それぞれに特徴の違う糸を何種か頂きます。触れているだけで指先に伝わる優しさ、光や角度によってくるくると表情を変える美しさ、見惚れながら編んでいる時間はまさに至福です。







【一期一会の草木染め】


中野さんの糸、一番惹かれたのはその美しい色でした。草木染めとは思えないほどの透明感と発色。心にはたらきかける様な、自然の色の持つちからを感じます。


2023年、中野さんはNHKの「趣味どきっ!」に出演なさいました。〝染めものがたり〟という特集の中のお一人として、なんとも美しい手仕事のシーンの数々と共に、その想いやお考えが紹介されていました。


素材が同じでも、その時々の環境によって全く同じ色にはならないそう。例えば「桜色」は、花が咲く少し前の桜の小枝からこのような色が現れるそうですが、その幅の広さに驚かされることも。


絹が本来持つ艶やかな質感と、自然の色がと重なり合って生み出される、一期一会の糸。見る角度によって印象を変える様は感動的な美しさで、写真ではなかなか伝えきることができません。心のこもったお仕事には、お人柄が感じ取れるというか、不思議と伝わるのだなと思います。そのお手伝いができるようにと、わたしも気持ちが引き締まります。



      



【糸の個性を活かして仕立てる】


canoanさんからは少しずつ違う個性を持った糸を数種類いただきます。「織る」ために生まれた糸は、太さ、柔らかさや質感、そして色も、人の手から生まれる糸ならでは、それぞれに違う魅力を持っています。


私はそれを見て触れて、どんな形にするか、どこに使うと魅力が引き立つかを考えます。タッセルにしたり、編み方を変えたりと、それぞれの場所を考えます。編むのには向かないのかもしれないと思いながらも、糸のもつ魅力の邪魔だけはしないように、なるべく引き立つように。


糸の持つそれぞれの個性に任せて、色もサイズもバラバラに。普段より少し自由に仕立てたものたちが、一期一会のご縁を待っています。