2025/02/28 15:49



今年の春も、名古屋のカフェギャラリーhagiさんへお届けする機会をいただきました。テーマは「北陸 春だより」。北陸にゆかりのある作家さんたちとご一緒とのことで、伝統工芸でもない私が参加して良いのかと恐縮しながらも、せっかくなら少しでもいいから何か富山の素材が使えたらという考えに至りました。


昨年の展示の際は、初めて「布」を使ったものをいくつか作りました。気づきも多く、もう少し深く取り組んでみたいと思うと同時に、真新しい生地にはさみを入れることへの罪悪感みたいなものが生まれていました。ちいさな面積で十分足りるのになと。


canoanさんの糸が織りのあとに残った糸であるように、何かに使った後に残った「ハギレ」なら、この罪悪感が少し和らぐ気がしました。素材を無駄にせず大切に使いたい、そうできた時が一番嬉しいという気持ちについては、昨年のページに綴りましたのでよろしければ。


https://www.littlemiss-atelier.com/blog/2024/02/29/162351




(昨年作った小座布団の裏側はリネン生地でした)






富山で何か「布」に関わることがないかと考えたときに、いつか見たテレビ番組のことを思い出しました。確か城端で絹織物をつくる会社の紹介だったはず。それが松井機業さんでした。


HP  https://www.matsuikigyo.com/

Instagram  https://www.instagram.com/matsuikigyo/



明治10年(1877年)創業、老舗の機屋さん。「しけ絹」という絹織物を主軸にされています。


『一般的な蚕は1頭でひとつの繭を作り、羽化するまでその中で過ごします。しかし稀に、2頭の蚕がペアになって大きな繭を紡ぐことがあります。全体のわずか3%ほどしかない希少な繭は「玉繭」と呼ばれ、玉繭から紡がれる「玉糸」、それがさらに特別な「しけ絹」となります。玉糸は2頭の蚕の織りなす糸が自然と絡み合って1本となるため、通常よりも糸が太く、ところどころに節目のような独特の風合いが現れるのが特徴です。』

松井機業さんのブランド「JOHANAS」オンラインショップより抜粋 https://johanas.jp/about.html#1







節のある糸で織られていて風合いがある、和紙を貼り合わせて襖や屏風などの装飾に使われてきた。ふむふむ。サンプル生地をお取り寄せして、なるほど見たことがあるテクスチャーかも!と納得。


和紙と貼り合わせる前の「しけ絹」の生地そのものは、とても薄く繊細で、透けています。”軽やか”というのが Littlemissとしては大事にしてきたことのひとつです。それを表現する手段として”透ける”素材も選択肢としてありました。その透明感に加え、しけ絹ならではの”ゆらぎ”が生み出す表情にも魅了されました。節の部分がランダムに表れ光を反射して、とても綺麗。手編みの優しさと調和する予感がしました。



余談ですが、サンプル取り寄せの際にとても丁寧な手書きのお手紙が同封されていたことにも感激しました。一個人の作り手である私の話も、この方ならもしかして聞いてくださるかもと思えて、一歩踏み出す勇気をいただきました。



お手紙を添えてくださったのは、6代目の松井紀子さん。図らずも同世代の女性ということで、さらに親近感を持ちました。松井機業さんのブランド「JOHANAS」では、暮らしに身近なアイテムも展開されていて、視野の広さを感じます。美しく優しい、自然を感じる絹・シルクのアイテムたちがずらり。ぜひ覗いてみてください。



JOHANAS」オンラインショップ

https://johanas.jp/



いきなりハギレの問い合わせなんて失礼だよね、、、と思い緊張しながらも、どうしても惹かれる気持ちを正直にご連絡したところ、想像をはるかに超える軽やかさで快く受け入れてくださいました。まだ何を作るのかもほとんど考えていないざっくりとした私の依頼に、様々なはぎれをご用意してくださいました。








いただいたハギレには少しヨゴレがあったり、染めムラがあったり。それでも私にとっては一枚一枚がとても美しくてうっとり。だから結局のところ、はさみを入れる時の罪悪感のようなものはさほど変わりませんでしたが、できる限り無駄なくかたちにして届けようという気持ちが一層高まりました。またしてもきっかけをくださったhagi店主、園部さんにも心からの感謝を!



今回使ったのは頂いた中のごく一部。しかもごくごく小さな部分として。まだまだこの素材の魅力を伝えきれていないと感じています。他にも色や質感も様々な生地が手元に眠っているので、今後も大切に使わせていただこうと思います。ひとまずかたちにした5つの小さな袋たちをお披露目です。作品の紹介は次のページで。


 https://www.littlemiss-atelier.com/blog/2025/02/28/223036